C-N結合の形成反応

 今週のC&ENのcover story(かな?)はC-H→C-N変換についての記事であった。Phil Baranがこの仕事を、全合成へも波及効果のあるブレークスルーだと評したらしい。(Phil Baranってだれ?→有機化学美術館・分館を参照のこと)
Amination Advance

 そういえば、ちょっと前のC&ENもやはりアミン化合物の合成がトピックスだった。
Amine Synthesis Gains Utility

 記事の中の式だけ見ている限りでは、こっちの仕事は何となくものとりにも使えそうな気がする。

 inoueは化学プロセス技術者を自称しておきながら、固体触媒関連の反応のほうがなじみがあるので、このあたりの反応になると”ああ、難しいのね”とはなってもなかなか実感がわかない。
 なのにこの反応にちょっとアンテナを立てたのは、固体触媒屋にとってC-N結合といえばやはりなじみの反応だからである。アクリル繊維のもととなるアクリロニトリルモノマー下のような反応は(アンモ酸化反応)でつくる。


↓こんな反応

CH3CH=CH2 + NH3 + O2 → CH2=CH-CN

この反応が見出されたのはほぼ40年ほど前、Standard Oilの研究者(のちBPを経てSolutiaだっけ?)らが見出した。以前はNOを用いて酸化したり、もちょっと別の製法もあったのだが、反応の発見からほぼ10年かけて世界中のアクリロニトリル製造法はこれに置き換わったのだからすばらしい反応である。
もひとつついでにいうと、触媒をかえるとプロパンからもアクリロニトリルがつくれる。触媒をがらっと変えなければならなかったとはいうものの、”アンモ酸化”という枠組みは変わらなかったのだから、Standard Oilの件の研究者はとても偉い人だと思う。なお、この反応で動いている工場もあるらしい、とはknak師匠のブログの情報

CH3CH2CH3 + NH3 + O2 → CH2=CH-CN

 いかんせん固体触媒の絡む反応の常で、反応のメカニズムの理解は大して進んでいないはず。わかればちょっとは有機合成屋さんに役に立つかもしれない・・・けれどもちょっと条件がきつすぎるかな。