ビスフェノールA

 昨日に引き続き、C&ENから

Bisphenol A Assessment Released - C&EN

 9月3日、NIH (National Institutes of Health) - NIEHS (National Institute of Environmental Health Sciences)傘下のNTP(National Toxicology Program )が、ビスフェノールAの人体への影響についてのモノグラフを公表した。つまり、元記事はこれ。

3 September 2008: NTP Finalizes Report on Bisphenol A

 ビスフェノールAの影響を、人体に対する影響として報告されてきたものや、動物実験結果の報告に基づいて判断しようとしたもの。人体に対する影響については、データが少ないうえ、そのなかで”ビスフェノールAの影響”と言い切れるケースが限られるとしている。そのなかでも”ビスフェノールAに恒常的に曝露してきた成人男性のケースについては、ホルモン様の影響が認められる”としている。なお、NTPでは人体への影響を5段階に分けて=“影響なし”から、“重大な影響”まで=評価しているが、この“ホルモン様の”影響については、下から2段目の”軽微な影響”とランクづけている。

 一方、胎児から子供に至る発育時の曝露に対する影響については、マウスおよびラットによる研究成果を元に、”発育に何らかの影響がある”(3段目)としている。ただし、動物実験の結果と、人体への影響への関連づけについては、“さらなる研究が必要”としており、この評価が流動的であることを示唆している。(もっともNTPのヘッドラインでは、この”3段目”というのが強調されているきらいがあるのだが・・・)

 なお、FDAは先月、”現状の曝露の程度であれば、ビスフェノールAが人体に及ぼす影響は認められない”とする評価結果を公表しており、この評価結果に対する公聴会が9月16日に予定されているとのこと。

FDA Calls BPA Safe - C&EN

 ”環境ホルモン”問題から10年。ビス−A代替研究を行った研究機関も多かったと察する。また同じような研究テーマが立つかもしれない。
 ただ、テーマをたてるに当たっては、実際にこれらの報告書を熟読の上、”はたしてこの“影響”が本物か?実際の住環境で起こりうることなのか、ということを自ら判断して、行うことが賢明であろう。そのような意味で、化学物質の持つ“リスク”とのつきあい方、という点で、佐藤健太郎の本は、常識に基づいた良書であると思う。

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