有機化学美術館へようこそ

さとう氏の表題のホームページ(の一部)が本になった。

inoueは化学を専攻してきた身ではあるが、有機化学が専門ではない。そのせいもあってか、新鮮な気持ちでいくつかのトピックを楽しむことができた。タキソール(抗ガン剤)の全合成、ベンゾピレンの発ガン性発見にまつわる話などはとても興味深く読んだ。また、ベンゼン環を3角形につなげないことも知らなかった・・・あ、これはむしろinoueの不勉強ですね。

とはいっても、本書の真骨頂は有機分子の”かたち”へのこだわりであろう。awaodori分子、踊るnano人形、nano車など、しっかりさとう氏の術中にはまって楽しんだ。また、結晶に泣かされる話や合成屋ならではの“におい”に対するうんちくからは、氏の職場での日常が垣間見える気がする。

ただ、欲を言えばいくつかの主要な文献は引用してほしかった。(それこそ、タキソールの全合成を成し遂げたトップ2など、である)それから、かたちにこだわっただけあって配色にもかなり気を使われたのではないかと思うものの、色から元素がすぐにはイメージできないような絵がいくつか見られたように思う。もし今後版が重ねられる機会があれば検討されたし、というのがinoueの要望である。

さはさりながら、本書は、いい意味で素人らしく、(先生の書く本ではなく、という意味で)好感の持てる本であるとinoueは思います。

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